UX探訪記

UIデザインやUXデザインに関する記事を集めたり書いたりしています。

作り手への共感というUX

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Photo by Przemyslaw Marczynski on Unsplash

iPhone XSに機種変更してしばらく経ちました。 Face IDによるロック解除やポートレートモードでの写真撮影など、素晴らしいUXだなと思えるものがある反面、以前使っていた iPhone 6s と比べてそこまでの違いがないような・・・。
ハード的にこれ以上必要なものはそれほどないのかもしれません。

そんな中、ひとつ気づいた細かい動きについて今回は考えてみます。

ホーム画面に戻るジェスチャー

iPhone X からホームボタンが消え、全てジェスチャーでの操作になりました。 アプリを閉じるときも、下にあるバー(ホームバーというらしいです)を上に持ち上げると画面が徐々に小さくなっていき、最後にはホーム画面のアイコンに戻る、という見た目になっています。

この操作は、別にバーのところを持ち上げなくてもよくて、下端のどこでも上に持ち上げれば、同じようにアプリを閉じる振る舞いになります。
要は下端のエッジスワイプがアプリを閉じるトリガーになっているわけです。

バーのバウンス

この操作で気づいたことがあります。
バーを少し持ち上げて戻したとき、つまりアプリを閉じる操作をしようとして「やっぱりやめた」なったとき、バーがバウンスするのです。
ビヨヨヨーンとバネのように動くということですね。
これがバーではない位置で下から持ち上げて戻したときには、バウンスしないのです。

動画を撮ったので載せておきます。 バーがバウンスしたタイミングがバーの位置で下からスワイプしようとした場合、バウンスしなかったタイミングがバー以外で下からスワイプしようとした場合です。

おわかりいただけただろうか?
・・・いや、細かすぎてわかりにくいですね。。

マイクロインタラクション

こうした細かい挙動はマイクロインタラクションと呼ばれ、最近特に増えてきているように思います。
マイクロインタラクションには UI の品位を上げるという役割もありますが、どう動くのか、どういう機能なのか、理解を助ける役割もあります。

今回のこのケースは、アプリを閉じるまでにはいかなかったため戻った、ということがわかる動きになっています。
ただ、それならバー以外のところで同じ操作をしても、バーがバウンスしてくれてもよいのではと思います。
私はこのあたりにAppleのこだわりを感じます。

これらはユーザビリティの向上にどれだけ役に立っているかというと、実際のところ、ほとんど役立っていないのではと思います。
ただ、こういったところに職人芸を見て嬉しくなったり、作り込みに感動を覚えたりすることで、ひいてはそのブランドのファンが増えるのではないかと思います。

作り手への共感

最近よく耳にするデザイン思考では、ユーザーへの共感がまず第一にあります。
ただ、「提供者側に対してユーザーが共感する」という方向も十分に考えられます。

バーのバウンスは些細なものですが、こうした「作り手のこだわり」に共感するUXというのも無視できません。
一方通行ではない、「双方向の共感」についても考えてみる必要がありそうです。