UX探訪記

UIデザインやUXデザインに関する記事を集めたり書いたりしています。

UX関連記事 (2018/3/5)

急に花粉がすごくなりましたね。今まで特に医者へは行かず、薬も飲まず、気合で乗り切っていたのですが、歳のせいかそろそろ限界のようです。。
さて、先週一週間くらいで私の気になったUX関連の記事を紹介します。

ユーザー調査における5つのファシリテーションスタイル (UX MILK)

ユーザー調査や評価に関してファシリテーター(この場合はモデレーターと呼ぶほうが的確かもしれませんが)のスタイルを5つに分けて解説しています。
それぞれのスタイルの名前が面白いですが、その違いを大まかにいうと、被験者への介入の程度の違いだったり、課題発見型か仮説検証型かの違いにより分けられています。
要は何を確認したいか?によって、このスタイルも変わってくるのだと思いますが、それぞれのスタイルを上手にこなせるようになるには場数が必要なように思います。

iOSの「マップ」アプリの目的地までの所要時間が他社よりも長めに設定されている? (iPhone Mania)

Googleマップなどに比べてiOSのマップアプリが所要時間が長めに出るということですが、こちらのほうがユーザーの満足度が高いように思います。
これはドン・ノーマンが少し前の著作で「待つことのデザイン原則」として挙げていることのひとつでもあり、大切な要素だと思います。
この結論からなぜ「 目的地に早く到着したい場合はGoogle マップ」となるのかはちょっとわかりませんが、例えば回転寿司の予約アプリなどは、予想よりも早く順番が来てしまうと困ることが多いので、より正確な所要時間の表示が必要そうです。

物語から始めるUXデザイン: ストーリーテリングと魅力的な製品デザインの関係を学ぶ (Adobe Creative Station)

『ストーリーマッピングをはじめよう』の著者のインタビュー記事です。
UXデザインにはストーリーが大事、ということで、結構長文のインタビューになっていますが、全体のイメージを把握するのには記事中の挿絵が(英語ではあるものの)優れていると思います。
UXが脚光を浴びてから、「モノではなくコト」という言い回しが用いられて久しいですが、今後は「プロダクトではなくストーリー」という言い回しのほうがよいのかも、と思いました。

ロックの歴史で理解する「カスタマー・エクスペリエンス」(顧客体験)の変化 (ajike)

ロックの変遷と、そこで得られていた顧客体験についての記事です。
どちらかというとただのロック史の紹介のようになってしまっていますが、ここで出てくるアーティストを全て聴いたことがある私としては、この内容で満足だったりします。
ひとつ思うのは、音楽で必要なのはやはりオーディエンスの共感であり、「自分たちのやりたいことをやる」と宣言していた、スレたバンドも、実際には聴く人の姿を想像しながら曲作りをしていたのではないかということです。
その意味では、彼らも優秀なUXデザイナーだと思います。

Designing for Intentionality (UX Planet)

意訳になってしまいますが、「手がかりのデザイン」についての記事です。
必要だと思われるところにちゃんと手がかりを作っておいて、それにユーザーが気づけるようなデザインが、提供者側の意図が伝わるという点で良いデザインだと言える、とのことです。
確かに手がかりに気づけるかどうかは重要ですが、本人が意識して気づいていなくても、知らぬ間に手がかりをもとに行動を起こしてもらえていれば十分かもしれません。
それはそうと、冒頭の「トイレのドアロックがかからない」という事例は、手がかり以前の問題のようにも思います。

The UX Of A Public Robot (Co.Design)

カフェのロボットについての記事です。
ただコーヒーを淹れるだけではなく、人間らしいふるまいを取り入れて親しみやすくしているようです。
記事に書かれているように、ロボットが自動販売機と同じになる必要はないと思いますが、ではなぜロボットであるべきなのか、という議論も必要です。
この記事を読んで私が思ったのは「自分のためにコーヒーを淹れてくれている」というUXなのではないかというものです。
その意味で、よりパーソナライズ化されたサービスだったり、温かみのあるサービスが提供できる羽陽デザインしていくべきなのかもしれません。

UX関連記事 (2018/2/26)

最近立て続けに映画を観てきました。『鎌倉ものがたり』と『空海』です。どちらもおすすめですが、個人的には後者のほうが良かったかなと思います。
さて、先週一週間くらいで私の気になったUX関連の記事を紹介します。

ユーザーの行動をデザインする前に「リグレット・テスト」のすすめ (Goodpatch Blog)

私のお気に入りであるHooked Modelの著者の記事です。
UXデザインは倫理的であるべきで、それを確認するためのテストを推奨しています。Facebookについての記載は、たしかにそういう面もあると気付かされて、新鮮でした。
ただ、アプリに限らず、私たちは私の周りの環境やきっかけにより行動が変わることもよくあります。割引セールを見かけたり、レストランからいい匂いが漏れてくるなどのケースです。
ときには後悔することもありますが、しばらく時間が経ってからそう思うこともあるので、何をもって倫理的というかは議論を重ねる必要がありそうです。

ユーザーが嫌うオンライン広告12種を定めた「Better Ads Standards」日本語訳 (Web担当者Forum)

Googleが定めた、悪い広告の例に関する記事です。
具体的なふるまいと一緒に説明が書かれており、わかりやすいです。思わず「あるある」と思ってしまうこともあるのではないでしょうか。
ただ、こういったものはまた他のダークパターンが出てくるなど、イタチごっこの側面もあります。
ユーザーとしては、うっかり踏まないようなリテラシーを身につける必要があるわけですが、サイトを設計する立場としても、こういった要求があったら、長い目で見ればサイトの価値を下げるものだとして反対していく姿勢が大事だt思います。

デートピッカー (Website Usability Info)

デートピッカー(日付選択コントロール)について、アクセシビリティの観点で説明されている記事です。
input typeをdateで指定すべし、とのことで、OSやブラウザー側で対応していれば共通の使い勝手で操作できるので、確かにそのほうが便利そうです。
将来的には、この辺りはOSやブラウザー間でも差異のないようになっていくとよいなと思います。
そうすれば、さらなる使い勝手の向上も図れますし、開発側としても検証工数を減らすことができるからです。

UXデザイナーがユーザビリティデザイナーになってしまう残念さ (竹内 裕和)

UXデザインはプロダクト単体だけでなくUX全体をデザインする役目なのに、現状あまりそうなっていないという記事です。
間違ってはいけないのが、ユーザビリティはとても大事な視点であるということで、UXデザイナーはそのうえでサービスデザインを実践していくべきだと思います。
また、開発やマーケティングなど、幅広い知識を持つ必要はあるものの、それをひとりで全部網羅しなければならないわけではありません。
プロジェクト全体でUXデザインを考えていく体制ができていくとよいなと思います。

The Death of The Standalone App and What Comes Next (Adobe Blog)

モバイルアプリについて、現在のようなスタンドアロン型のアプリは減っていき、プログレッシブWebアプリやチャットボット型のアプリが増えていくのでは、という内容です。
記事で述べられているとおり、私たちが普段使いしているアプリの数はごく少数で、そこに食い込むのはよほどの理由が必要そうです。
AIの進化に伴い、モバイルのホーム画面もそのうち変わってくるはずなので、そういった将来を見通して、ユーザーとのタッチポイントをどう設計するのか、今のうちから考えられるとよさそうです。

What I learnt from 30 ideas in 30 days (UX Planet)

毎日ひとつずつ製品のアイデアを出していったという記事です。
著者はまだ駆け出しのデザイナーのようですが、すでに社会に出て長い年月の経っている私も、似たようなことをやろうと考えていたところなので、興味を持ちました。
常日頃からアイデアを考えていると、それが日常化し、ふと重要なアイデアを思いつく可能性も増すと思います。
この記事で書かれているアイデアの条件は「実現可能で、必要とされていて、影響力のあるもの」とのことで、毎日考えるにはけっこう敷居が高いですが、これを続けていければ、かなり力がついてくるのではないかと思います。

UX関連記事 (2018/2/19)

最近ジグソーパズル熱が上がってきて、以前完成させたことのある1000ピースのパズルをまた引っ張り出して遊んでいます。一度始めると止め時がなく、延々とやってしまうのが課題です。
さて、先週一週間くらいで私の気になったUX関連の記事を紹介します。

UXデザイン、よくある3つの失敗とは?:もう迷わない! ビジネスを成長させるUXデザイン手法の使い方(1) (@IT)|]

UXデザインの失敗に関する記事です。
失敗の種類として3つ上げられていますが、つまるところUX戦略をないがしろにしない、というのが大事だと感じます。
「ユーザーが望んでいない行動をしてもらう」というのは、ひっかかる人にとってはひっかかる表現のように思いますが、もう少しソフトな言い方にするとすれば、「ユーザーが潜在的に望んでいる行動に仕向ける」ということなのではないかと思います。
実はよく知っている方なので連載が楽しみです。

驚きのコンビニ革命「Amazon Go」体験レポート、AI技術の“魔法”の秘密がわかった (BUSINESS INSIDER JAPAN)

Amazon Goの体験記事です。細かいレポートで、かなりわかりやすいです。
そもそもこの店舗形態自体が新しい体験なわけですが、退店してから決済が走ることでユーザーの待ち時間を作らない(と筆者は推測している)点など、UXをより良いものにする努力も行われていることは素晴らしいと思います。
日本からもスーパーやコンビニのUXを革新したものが出てくると良いですね。

6,000万DLのメルカリがユーザビリティテストを大事にする理由 (mercan)

メルカリのユーザビリティテストに関する記事です。
実際にテストから得られた気づきがわかりやすく書かれていて、若干コマーシャル的な要素が見られる記事であるものの、それを差し引いてもためになる内容だと思います。
週一でのテストというのはかなりの頻度で、テストするほうも大変だと思いますが、リリース自体がそれくらいあるのだとすると、当然の話になってくるのかもしれません。

スマホ向けサービスのUXデザインは「速度」が重要 (Web Design Trends)

主にECサイトでの速度向上についての記事です。
ページ表示速度の向上だけでなく、購入までの流れの中で、入力補助などにより、ユーザーのストレスを軽減する方法についても記載されています。
サイトの滞在時間がどんどん短くなっている現状では、これらの対策を丁寧に行っていく必要がありそうです。

Why Designing Only For Some Users “SUX” (Adobe Blog)

"SUX" というのは "SOME User Experience" ということで、一部の人向けのUXデザインという意味合いです。
これをネガティブな意図でつかっており、アクセシビリティを考慮するなどして、すべての人が使えるようなもの、つまり本当の"UX"になるように検討していく必要があるという内容になっています。
この考え方に基づくと、通常のペルソナやカスタマージャーニーマップなどは「SUXデザイン」になってしまうわけですが、ユーザーを明確にするのは必要不可欠だと思います。
そういったユーザー像から外れるユーザーがいることも十分意識しつつ、ユーザビリティアクセシビリティを高めるのが大事なのだと思います。

10 case studies that show how an application’s new icon increased downloads (UX Planet)

アイコンデザインがモバイルアプリのコンバージョン率(ダウンロード数)に大きな影響を与えるという記事です。
実際に新旧アイコンや新アイコンの案や、その結果について、10通りの例を通してみることができ、参考になります。
1つ目の例のように、旧アイコンがイマイチだったことが明白、というものもありますが、中には「なぜそれが?」というアイコンがもっともユーザーに支持されている、という例も見られます。
この「なぜ?」という理由がわかれば苦労はないのでしょうが、現状ではA/Bテストなどをこなしていく中で見つけていくのが一番確実だと思います。

UX関連記事 (2018/2/12)

オリンピックが始まりましたね。普段はあまり観ることのない競技も真剣に応援してしまうというのがなんだか不思議です。
さて、先週一週間くらいで私の気になったUX関連の記事を紹介します。

UXデザイナーが守るべき最も重要な15のルール (Adobe Creative Station)

15のルールということで、前半は主にUXに関して、後半はUI、ユーザビリティについてのルールが記載されています。
個人的には9番と13番が大事だなと思いました。
あとは意外と重要なのが15番の項目で、そこに書かれているeBayの事例は興味深いです。

UXに「権威の原則」を当てはめてウェブサイトの信頼性を高める方法 (GIGAZINE)

権威のありそうな人物や会社を提示するとサイトの信頼度が高まるという話です。
サイトに限らず、雑誌の広告やテレビCMなど、似たようなものは昔から多く見かけるので、かなり効果はありそうです。
これらは誇大な表現に陥らないよう、またユーザーに誤解を与えないようにする必要があると思いますし、そこで得られた期待を裏切らない製品・サービスを提供することは必須であると思います。

ニュース解説 - 東大病院でシステムトラブル、電子カルテ刷新直後に混乱 (ITpro)

システム移行後にユーザビリティやデータ移行の絡みでかなり問題となっているという記事です。
システム移行時のこうしたトラブルは、規模こそ違えど頻繁に起こっている印象があります。
パッケージへの移行だとどうしてもカバーしきれない面はあるのかもしれませんが、まずは現在の関係者の洗い出しとその業務フローの理解をしっかり行い、移行する際に何が足りなくて、どういう運用が追加で必要になるかを把握する必要性を感じます。

ルーセルを使うときに起こりがち…5つのユーザビリティミスを知ろう (SeleQt)

https://www.seleqt.net/design/5-big-usability-mistakes-designers-make-on-carousels/

Webサイトなどでスライドショー的にコンテンツが自動切り替えされていくコントロールを「カルーセル」と呼びますが、その使用方法に関する記事です。
ユーザーが全体の長さをわかるようにするとか、ボタンサイズを大きくするとか、そのポイントがわかりやすく書かれています。
ただ、カルーセルでなくてもいいものがカルーセルになっているWebサイトも良く見かけます。
こういったケースを避けるため、どういった場合に使うべきかも考えておく必要がありそうです。

“The screen is dead”: What this means for the future of technology (UserTesting Blog)

「画面は死んだ」という記事で、当然昨今の音声UIやAI技術が画面に取って代わるという話になっています。
この中でも述べている通り、音声UIは受動的なものであるため、提示された単一の選択肢が信頼できるものであるべきだと思います。
その意味で、スマートスピーカーはまだ発展途上だと言えるわけですが、AmazonのEcho Showのような画面付きの製品は、その間を埋める役割で終わるのか、あるいはやはり「画面は死ぬことはできない」のか、今後の行く末が気になります。

Universal design is for everyone, everywhere (MNN)

ユニバーサルデザインについての記事は今まであまり取り上げることがありませんでしたが、この記事は7つの原則がわかりやすく整理されていたので、今回取り上げてみます。
各原則で紹介されている事例も豊富で、ためになります。
アクセシビリティとは異なり、対象が「すべての人」ということですが、記事の最後で「これはほんの常識」と言っている通り、常に設計過程で検討すべき項目として組み込んでいけるよう意識したいと思います。

UX関連記事 (2018/2/5)

インフルエンザが流行っているせいか、街中でもマスク姿を多く見かけます。このマスク、白や黒以外にももっとカラフルなものがあっても良いのではと思います。水玉やレインボーカラーなど、冬の街が少し華やかになる気がします。
さて、先週一週間くらいで私の気になったUX関連の記事を紹介します。

プロトタイプの忠実度。ローファイ・プロトタイプ(簡易版)とハイファイ・プロトタイプ(本物っぽい版)を正しく使い分ける (Adobe Creative Station)

プロトタイプに関する記事です。
ローファイ(低忠実度)とハイファイ(高忠実度)のそれぞれのプロトタイピングについて、利点と欠点が挙げられています。
肝心の「正しく使い分ける」という部分に関してはあまり触れられていませんが、最初はローファイで低コストで繰り返し、ある程度進んでいけると考えたらハイファイで進める、というのが標準的だと思います。
これ以外に、プロモーションムービーやストーリーボードも、事前にシステムやサービスのふるまいを可視化できる点でプロトタイプととらえることができます。
こういったものを駆使して、なるべく早めのフィードバックを得られるとよいと思います。

EVの登場で “ユーザーエクスペリエンスの革命”が起きている―夏野剛氏インタビュー (BLOGOS)

EV車についてのタイトルになっていますが、今話題の自動運転やコネクテッドカーの話も含まれていて、総合的にクルマのUXの話になっています。
「ガソリン車をEVにするという発想ではもったいない」という言葉は確かに納得でき、人が移動するという上位概念で考えていく必要があると思います。
ただ、クルマの場合、人命も関わってくるので、安全や交通ルールといった観点による制約もあるのが難しいところです。

「偽ミニマリズム」に騙されないで!UXを考慮したミニマリズムの取り入れ方を再考する (SeleQt)

https://www.seleqt.net/design/stop-with-the-fake-minimalism/

フラットデザインの登場あたりからアプリUIはミニマリズムが全盛ですが、その注意点について記載した記事です。
デザインをシンプルにしすぎたり、機能を隠すなどしててわかりやすさを犠牲にしているのを「偽ミニマリズム」と呼んで、避けるようにと言及されています。
ミニマリズムというのは「必要最低限」のデザイン、という意味ですが、「必要」な部分も取ってしまってはダメで、ユーザーにとってのわかりやすさ、ユーザビリティを追及する結果としてのミニマリズムの発露を期待したいです。

デザインの敗北? ロフトのイケてる案内板、なぜかテープで補足説明 (withnews)

この案内板は以前会社の同僚から紹介されて知りました。
ターゲット層に響く表現ということですが、こうなることは目に見えていたのではと思います。
案内板が案内として機能しておらず、課題解決になっていないからです。
その意味で、これは「デザインの敗北」というより、「デザインとは呼べない」と表現したほうが的確なのではと思います。

Why the best interface is just enough of an interface (UXM)

必要十分なUIがベストだという記事です。
この中に出てくる "The Best Interface is No Interface" は、『さよなら、インタフェース -脱「画面」の思考法』という日本語訳も出ていますので、興味のある方はご覧になるとよろしいかと思います。
この記事では、No UI ではなく、必要十分なUIが良いという意見ですが、私もこの意見に賛成です。
ユーザーがタスクをこなすのに一番自然でストレスを感じないもの、それを突き詰めたうえでインターフェースの形が決まってくるのではないかと思います。

Offboarding In The Online World (Smashing Magazine)

https://www.smashingmagazine.com/2018/01/customer-offboarding/http://amzn.asia/1R2oPSC

主にECサイトでのオフボーディング体験についての記事です。
オフボーディングとはオンボーディングの反対、つまりユーザーが商品購入を取りやめたり、サイトから去ろうとしていたり、退会しようとしたりするときの体験のことで、オンボーディングに比べてないがしろになっていると指摘しています。
かなり長い記事ですが、読まれていないメルマガをどうするか、など多くの事例を織り交ぜながら具体的に記載されているので参考になります。

ハワイのミサイル誤報について考えてみる

先日も記事紹介で少し触れましたが、1/13に発生したハワイのミサイル誤報がイマイチなUIに起因するものということで、たくさんの記事が出ていました。
今回はそれを少しまとめてみたいと思います。

状況

この問題について詳細は私が記載するより以下の記事を見ていただくのが早いと思います。

で、イマイチなUIと言われているのがこの画像です。
(画像は Honolulu Civil Beat のサイトより拝借しています。) f:id:junichiirokawa:20180201010829j:plain f:id:junichiirokawa:20180201010811j:plain

2パターン出回っていて、どちらも本当の画面でない(カスタマイズして使っている)とのことですが、2つ目のほうが実際に近いという話です。
確かに1つ目のほうは、90年代の香りがします。
2つ目のほうは、これもモックアップっぽいですが、ドロップダウンで選択されるUIになっています。

今回の原因について、当局は担当者の誤認識が原因、と言っていますが、おいおい本当かよ、と言いたくなるくらいイマイチなUIです。
ユーザビリティにフォーカスすると、以下の点が考えられると思います。

  • 文言の問題
  • 表現の問題
  • UIコントロールの問題(主にドロップダウンメニュー)
  • フィードバックの問題

文言の問題

UI上の文言がどれが本番でどれがテストかわかりにくい、という問題です。
英語だからというわけでもなく、日本語でも双方の区別はつきにくいと思います。
これではとっさのときにテストメッセージとして送信してしまう恐れもあるわけです。

表現の問題

したがって、文言をもっとわかりやすくすればいい、という解決策も考えられますが、そもそも両方が同じ露出度で並んでいることがそもそもの問題ともいえます。
私たちが普段エレベーターの「開」と「閉」を間違えてしまうのに似ています。
この場合、本番の選択肢の色を変えたり、場所を変えたりするなど、きちんと表現の重みづけをすべきだと思います。

UIコントロールの問題

2つ目の画像のUIコントロールはドロップダウンメニューになっていますが、こういった重要度の異なる選択肢を一緒に入れるのは避ける必要がありそうです。
というのも、Aを選択しようとしてそのすぐ下のBを選択してしまう、というように選択肢を間違えるケースがあるためです。
これはスリップと呼ばれています。
詳しく知りたい人は以下をご参照ください。

また、選択した項目が合っていたとしても、そのあとマウスホイールを動かして画面をスクロールしようとしたときにドロップダウンメニューにフォーカスが残っていて、別の選択肢に切り替わってしまうという問題もあります。
こちらはアニメーションでそれを再現した記事がありました。

フィードバックの問題

情報では、画面上に本番のアラートであることを示す確認メッセージが表示されたものの、担当者にはスルーされたという話がありました。
実際のところ、普段確認メッセージに慣れっこになっていて、あまり読んでいない人は多いのではないでしょうか。
CBCラジオのサイトでは、以下のように確認メッセージをわかりやすくする案が示されていました。

これも解の一つだと思いますが、テストメッセージ送信には確認メッセージを出さない(そもそも送信UIを開いている時点でアクションを取ろうというモチベーションがあるわけで、クリティカルでないものは確認するまでもない)という方法も考えられます。
フィードバックはフィードバックとしてきちんと機能するように考慮する必要がありそうです。

それ以外の問題

UI上の問題ではない、それ以外の問題を提示している記事もありました。 http://www.uxbooth.com/articles/three-takeaways-from-the-hawaii-missile-false-alarm/

こちらはUIの問題ではなく、ヒューマンエラーの問題でもなく、プロセスの問題だといっています。
システム導入の意思決定者と実利用者の意思疎通や、全体の予算のために見落とされる部分などについてフォーカスしています。
ただ、その文脈であれば、プロセスというより体制の問題といったほうがしっくり来ますね。
この場合、システム検討時にUXやUIの知見を持った人が関わっていなかったから起こった、ということが言えると思います。

改善案について

以上の話の中で、解決策についてもいくつかアイデアを入れてみましたが、それ以外にも多くの記事で解決策について述べられています。
大方が確認メッセージをリッチにする報告になっていたのですが、ひとつ良い解決策を示していた記事がありました。

こちらの案は、先にテストか本番かを聞くパターン。
つまり、一回で選択されるわけではなく、タスクを分けるということです。
見た目がウィザード (今風にいうとステッパー) になっていますが、これらは1ステップで1タスクが基本なので、より親和性が高いように思います。
緊急時にウィザードで指示がもたもた、という場面も出てきそうですが、まぁそこまで遅くならないでしょうし、ヒューマンエラーは格段に減ると思います。

避難訓練

ということで、ハワイの人たちは大変だったと思いますが、あえて良い意味でとらえれば、避難訓練の練習にはなったのでは、と思います。 テストメッセージ送信では、必死に避難することもなかったでしょうし、今回避難してみてわかった課題もあったようです。
それらが明るみに出たという意味では、有益だったのかもしれません。

気を付ける必要があるのは、狼少年みたいに、来る来るといっていつも何も起こらないのに慣れっこになってしまうことです。
ちょうど、今回の画面で確認メッセージに対して慣れっこになってしまい、意味をなさなかったようにならないよう、送信エラーも再発防止していけるといいですね。

UX関連記事 (2018/1/29)

最近とても寒くて、朝布団から出るのが苦痛です。目覚ましと連動してだんだん冷たくなる布団があればスムーズに起きられて便利、とひらめきましたが、そんな布団は誰も買いたくないかもしれません。
さて、先週一週間くらいで私の気になったUX関連の記事を紹介します。

すべてのUIデザイナーが知るべき7つのヒューリスティクス (UX MILK)

UIデザインのヒューリスティクス、すなわちUIデザイン原則に関する記事です。
文中でも出てくるニールセンの10ヒューリスティクスが有名ですが、ここではそれ以外の原則も含めて7つにまとめて紹介されています。
当然これ以外にもアクセシビリティの観点とか、異常系での対応とか、様々な原則があるわけですが、どういったケースでどれを考慮すべきかを適切に判断できるためには、たくさん経験を積んでいく必要がありそうです。

リモコンじゃもったいない、AIスピーカーの利用価値 (日経テクノロジーオンライン)

AIスピーカーの話題ですが、IoTに関する話が中心となっています。
機器をスマホで操作する、というのをUIの外在化という言葉にしていますが、既にそうなりつつあり、今度はさらにその方向性が強まっていくのでしょう。
そのコントローラーとしてスマホAIスピーカーがあるわけですが、将来的にそれ以外への外在化があり得るかもしれず、そういった観点でも考えてみる必要がありそうです。
この記事はもうすぐ無料で読める期間が終わってしまうので、早めに読むのをお勧めします。

自分らしい恋愛ができる相手を探す方法。サービスデザインの考え方を恋愛へ応用した【GLG理論】 (グルーヴィ サービスデザイン ラボ)

恋愛をサービスデザインのプロセスで考えてみるという記事です。
いったい何のサービスをデザインしているのだろうか、という疑問はさておき、サービスデザインのプロセスを身近な例で眺めることができるのは良いように思います。
ただ、最初の調査フェーズでターゲットに直接インタビューすればよいのでは?それを重ねることで、単純接触効果も相まって、その後のフェーズを経ずに済んでしまうのでは?なんてことも考えてしまいました。

The UX of AI (Google Design)

AIのUXデザインということで、Google Clipsを例にとって説明した記事です。
AIだけではユーザーの課題解決にはならない、人間中心のデザインが必要、ということで、実際の検討過程が詳しく書かれています。これを読むと、綿密なリサーチが行われていることがわかって面白いです。
最後のほうに書かれている「AIは機械をスマートにするものから、人の能力を向上するものに変える」という話が出てきますが、これは私がAIに期待していることと重なるので、とても共感できました。
なお、このGoogle Clipsは2月下旬に出荷予定のようです。

The secret heroes of UX Design (Compass of Design)

UXデザインの隠れたヒーローということで、いくつかのUIコントロールなどが紹介されています。
1つ目のプレースホルダーステートは、起動時にUIの骨格だけ表示する画面のことで、Android(Material Design)のガイドラインではプレースホルダーUI、iOSガイドラインでは起動画面(Launch Screen)と呼ばれているものです。忘れがちですが、けっこう重要だと思います。
総じてユーザビリティをしっかり高めよう、という内容になっています。
確かに最近は「UXデザイン」という言葉の陰に隠れがちであるものの、考慮する必要性は昔も今も変わらないと思います。

20 expert opinions on UI trends for 2018 (Be Good To Your Users)

20人の専門家が今年のUIトレンドについて語っている記事です。私がよく読んでいるUX関連記事の執筆者も何人か入っていました。
個人的に気に留まった意見としては、AIスピーカーやIoTなどのUIをわかりやすく進化させる必要があるというものと、UXライティング(というか、よりストーリー性を持ったUX)が台頭するというものです。
どの人がそれを言っているか、是非本文を読んでみてください。